黒と赤

お題:制限時間はあと1分 ルーフェロの夜:7【R-18】

 美しく着飾った魔貴族たちがそぞろ歩く、黒大理石の廊下の向こうに、明らかに人を誘う魅力を惜しげもなく振りまきながら、同時に誰もその内に入れない冷たさを纏ったルベウスの姿を捉える。
 彼に視線を向ければ、いつものように素早くその視線を捉えて返してくる。誰から向けられている視線でも敏感に反応し、それが誰なのかどういう視線なのかを吟味するのは習い性になっているのだろうが、デキウスを視界に捉えたときは無表情に見えながらも薄蒼の目が細められ、ピアスに触れた。
 デキウスは顎を上げて睥睨するような挑発の視線を返して笑い、無言で背後の小部屋へと招く。
 ルベウスが呆れたように眉を上げながらも、優雅に人の流れを避けてこちらへ踏み出したのを目の端で確認し、貴族たちが密談に使う小部屋へと身をすべりこませた。テーブルと二つの椅子があるだけの、小さな執務室のような部屋だ。
 殆ど間をおかずにルベウスが部屋へ入ってきて、背後で扉を閉めると、デキウスは間近で顔を確かめることすらせず、忙しなくルベウスを壁に押し付けてくちづけた。
 ルベウスの手が顔を挟むように抱き寄せ、その指先をデキウスの整えられた髪に差し入れて乱しながらいっそう深くキスを貪ってくる。
 お互いに押し付けた下半身はお互いを求めてはっきりと熱と形を主張しており、それを吐き出すことをせずには苦痛でしかないだろうことがわかる。
「次が控えてる……」
 キスをしながらベルトのバックルに手をかけてくるルベウスが、ささやかな苦情を言うと、デキウスは相手のテイルコートを脱がせて床に放り捨てた。床は舐めても大丈夫なほど綺麗だが、体液で汚さないには脱がせておくほうがいいのだ。
「文句を言うなら誘いに乗るな」
 深い声で笑いながら、どちらが早く脱がせるかを競う様に目的に必要な最低限の部分だけを露にしていくが、脱がすことの素早さにかけてはルベウスが手加減をしない限りこちらに分が無い。ましてやまたきちんと服装を整えねばならぬとあれば、引きちぎることもできないのだ。
 デキウスは文句が出そうなほど乱暴な手つきで壁に向けられ、手をつけと命じられて笑うが、露にされた双丘を前戯も無く押し開いてくる熱に苦痛と歓迎の嬌声を漏らした。いつもなら焦らすことを愉しむルベウスの手が屹立する己にかかり、早急に上り詰めさせようとする。
「どれだけ急いでるんだ……」
「誘った以上文句を言うな」
 同じような会話を繰り返すと、ルベウスは耳に舌を差し込んで笑った。
 荒々しい抽挿に身体を揺すぶられ、ルベウスは肉の中の熱さを味わい、二人は他人の閨を巡る合間の息抜きを愉しんだ。

 

ルーフェロの夜7