共に過ごした時間は長い。人間で言うならば、何度も転生を繰り返し、巡り会った時間だ。 だがそれはあくまで人間の概念であり、聖族も魔族もそこに特別な意味を重く置くことはない。価値がないわけではないが、『寿命…
1周年記念小説 【R-18】
倦怠や退屈という感覚は、淀んでまとわりつく水が何かをゆっくり腐らせていくのにも似て、それを感じると波立たせて足掻きたくなるのが常だ。 オディール島の黒鳥城は旧五神の一人があるじで一年の殆どを不在にしているが、人間との共…
【聖48】 眠りにつく前に 2
ルベウスは、自分の寝起きしている場所がお世辞にも整然としているといえないことは承知しているが、デキウスの部屋に比べればなんと混沌としていることかと改めて思わざるをえなかった。それほどデキウスの部屋は何もなく、白い殺風景…
【聖47】 お題:「眠りにつく前に」
ルベウスは聖遺物の倉庫と個人的なスペースをかねた、自分の薄暗くも心地よいねぐらに、肌も髪も白い大柄な男が当然のように場所を占めている風景に幾分慣れたなと思っていた。 そしてこの男は会話を愉しむためというよりも、体の一部…
お題『片思いなんて損してる』
ルベウスはジレの隠しに続く銀の鎖を引き出して懐中時計で時刻を確かめると、竜頭部分を押して音を立てずにそっと蓋を閉めた。指が離れた竜頭に埋め込まれたルビーが、窓から入ってくる夕刻の赤い光を反射して一層紅く光る。 デキウ…
【1/23】ゲーム(イラストより)【R-18】
テネブラエ城の書斎の隣の部屋は、ルベウスが勝手に自室めいた空間にしつらえた部屋で、聖界時代のように奔放に本を床に積み上げ、円陣を描くように並べた中央には、心地よいクッションがいくつも置かれていた。 いつもはそこでルベウ…
お題:「うちの子にエロい顔をさせる」 【R-18】
顔をあげて遠く視線の定まる先にある、発光魔石で彩られた繊細な装飾照明が、一つの汚れもないテーブルクロスの上に置かれた酒のボトルの色のついた影を落とす。枝分かれした照明の先端につけられた微細にカッティングされた発光魔石の数…
【AD01】 『邂逅』
葉が一枚もない枝に氷がびっしりと張り付き、その隙間から驚くほど蒼い空が見える。 背に血で染まった翼をだらりと落とし、子馬ほどもありそうな有翼のダイアウルフが雪を蹴る足を留めて、その上空を仰いだ。キラキラと氷が風に流さ…
【聖45】 【11/18】お題「教えてあげる」
返り血を浴びて魔物を斬り捨てている時の方が揺るぎ無く冷静で、一筋の感情の乱れも見られないのは、聖族としてどうなのだという笑いが込上げてくるのを感じながら、目の前の男を見る。 薄青の酷薄に見える双眸が自分の心の奥底まで…
【魔15】 切開 【R-18】
ルベウスはデキウスの体調を数日観察し、眠りに戻るタイミングや目覚めているときの様子から、今暫し多少の負担には耐えられると判断し、やりのこしていると認識していることを実行することにした。 一応、鎮痛の香や麻酔効果のある…