共に過ごした時間は長い。人間で言うならば、何度も転生を繰り返し、巡り会った時間だ。 だがそれはあくまで人間の概念であり、聖族も魔族もそこに特別な意味を重く置くことはない。価値がないわけではないが、『寿命…
1周年記念小説 【R-18】
倦怠や退屈という感覚は、淀んでまとわりつく水が何かをゆっくり腐らせていくのにも似て、それを感じると波立たせて足掻きたくなるのが常だ。 オディール島の黒鳥城は旧五神の一人があるじで一年の殆どを不在にしているが、人間との共…
お題『片思いなんて損してる』
ルベウスはジレの隠しに続く銀の鎖を引き出して懐中時計で時刻を確かめると、竜頭部分を押して音を立てずにそっと蓋を閉めた。指が離れた竜頭に埋め込まれたルビーが、窓から入ってくる夕刻の赤い光を反射して一層紅く光る。 デキウ…
【1/23】ゲーム(イラストより)【R-18】
テネブラエ城の書斎の隣の部屋は、ルベウスが勝手に自室めいた空間にしつらえた部屋で、聖界時代のように奔放に本を床に積み上げ、円陣を描くように並べた中央には、心地よいクッションがいくつも置かれていた。 いつもはそこでルベウ…
お題:「うちの子にエロい顔をさせる」 【R-18】
顔をあげて遠く視線の定まる先にある、発光魔石で彩られた繊細な装飾照明が、一つの汚れもないテーブルクロスの上に置かれた酒のボトルの色のついた影を落とす。枝分かれした照明の先端につけられた微細にカッティングされた発光魔石の数…
8 お題『甘やかす権利』 【R-18】
オディールでは4月に『ルーフェロの夜』という特別な祭がある。これは至高神の双子の弟、ルーフェロが魔界へと下る決心をした際に、付き従った聖族たちが共に冥界へとくだり魔族となり、魔界を作り上げた夜と言われており、あらゆる魔…
お題『添い寝してくれない?』
お題:①目蓋の裏にある笑顔/②幸福の条件=隣に君がいること/③添い寝してくれない? ルベウスはシルヴェスの都、ナハトメレクの自城に戻ってくると、出迎えたレジーナにコートを手渡しながら浅く溜息を吐いた。 今回の仕事の相手…
お題:制限時間はあと1分 ルーフェロの夜:7【R-18】
美しく着飾った魔貴族たちがそぞろ歩く、黒大理石の廊下の向こうに、明らかに人を誘う魅力を惜しげもなく振りまきながら、同時に誰もその内に入れない冷たさを纏ったルベウスの姿を捉える。 彼に視線を向ければ、いつものように素早…
お題:「代わりになるものなんてない」 ルーフェロの夜:6
①君のことならなんでも知りたい/②移り香にすらドキドキする/③代わりになるものなんてない 文字通り寝台に倒れこむようにして眠りに落ちたのは覚えている。うつ伏せに寝たままの姿勢で目が覚めると、デキウスの夜会…
お題「もしあの子がこれを着たら」(ルーフェロの夜:5)
「お前を引き立てる」 ルベウスはいつもそれと似たようなことを言って、デキウスにルーフェロの夜のための衣装や装飾品を届けに来る。実際、夜会で衆目を集めるほどに仕上がるのだから、彼の審美眼にもセンスにも疑問を持ったことはな…