黒と赤

【聖39】お題『この瞬間の君が好き』

 繋がっている部分のルベウスの中がデキウスを攻め立てるように締め上げ、力を抜け、というようにルベウスの頬を軽く叩く。ルベウスは両腕を上に上げてシーツを掴み、快感を追って半ば伏せていた目を煩げに開き、横目でデキウスを見上げた。
 視線を合わせ淫らに笑うと、自ら腰をゆるく動かしてデキウスの反応を愉しむルベウスに、デキウスも喉で笑うが、お互い余裕と言うものがじりじりと減っていくのがわかっている。
 だがこの最後の鬩ぎ合いの一瞬。
 相手を食い尽くそうと、快感の最後の一滴まで干そうとする以外に何も存在しない時が堪らない。
 ルベウスはデキウスの動きに耳への愛撫のような声を漏らし、両腕をデキウスの背に回した。それを合図のように、上り詰めるまで容赦されることのない抽挿が始まり、デキウスは突き上げられ揺さぶられても自分から視線を話さない薄蒼の高揚した双眸に、さらに快感を引き出そうと抉る。
「この瞬間のお前が良い――」
 果てる瞬間に囁いた言葉に、ルベウスは肩に牙を立てて甘く舐めた。


 

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