黒と赤

聖15-2 道化師(ぬるめのお題032)

斎戒宮の休憩室で漸く収まってきた吐き気にうんざりしながらカウチに身体を預ける。
慣れたくもないが討伐の度に焼かれ、今は少なくなっているが闇祓いで焼かれ、ルベウスに触れる度に焼かれていれば嫌でも慣れてくる。
しかし穢れを与える相手からの接触がなければ、それはそれでまた淀んでくるのだからデキウス本人もどうしようもないと苦笑するしかなかった。
祝福のような、他の相手には恐らく与えたことのない口付けに光明を見出だしているが、相変わらず分かっているのか無いのか判断しかねる態度には度々翻弄される。
「俺が鈍いのか?」
深い溜め息をつきながら額に手をあて考えてみても、あの時見せた笑みが浮かぶばかりだった。
耳元で擽るように笑い、冷えた視線が雪解けのように柔らかくなる瞬間は腹の底に蟠るものを確かに緩めていたのだ。
「…は、道化のようだな…」

 

 

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