黒と赤

聖28-2 お題【8/7】

こんなに好きにさせておいて/朝になった、夢じゃなかった/俺のものにしたい、でも、出来ない。 でしたが、自分のものにできないと言うより、自分のものになっている満足感が得られなくてもどかしい感じの二人w


 

 初めて情を交わすことになったのが、主人の結界の中になろうとは、と自嘲じみた笑いが唇の端に上るのを感じながら、ルベウスは傍らで満足げに眠るデキウスの髪をゆるくなでる。
 この一件は主人に筒抜けだろう。何を問われることもないだろうが、個人的な興味と執着心をもって誰かに触れたことを、珍しいとは思われるに違いない。
 興味と執着心。
 とりあえず自分の中でその言葉で片付けているが、この男に触れたいと想うのはそれだけだろうかと思う。
 手を伸ばせばキスでも抱擁でも応えてくれるが、それだけでは満足できない何かが穢れとして降り積もる。
 身を屈めてこめかみに唇を押し当てると、目を醒ましたのか力強い腕が背に回され抱き寄せられた。
 どんな言葉が適切なのかわからず、いつも何かが喉に詰まっているようで不快だ。それが抱擁で他愛なくわずかに溶ける。
 これでは始終その存在を強請りそうだ。
 らしくない、とまた自分を嗤う。

 顔を良く見ようと両手で挟み込み、指先で髪をかきあげるようにして薄蒼の眸で覗き込むと、デキウスが笑った。
「また飢えて食いたいという顔をしている」
 その指摘に異を唱えるように目を細めるが、反論はしなかった。
「お前が頭の中に居座って邪魔だから、食いつくそうかと」
「食い尽くせると思うなら、やってみるがいい」
 デキウスはそういうと不敵に笑い、ルベウスを腹の上に座らせた。
 再び熱で頭をもたげようとするお互いが目に入り、密やかに捕食獣めいた笑みを交わす。
「食い尽くされても何度も再生するぞ?」
「では随分と貪欲にならざるを得ないか」
「どこまで食えるか見ものだな」
 デキウスの挑発するような笑みに、ルベウスも半眼で唇を舐め、獣が舌なめずりをするような表情を見せる。
 
 そして深夜になるまでのもう少しの間、二人はお互いをどこまで食い尽くせるかについて熱心に時を費やした。

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