黒と赤

聖29 【8/2】お題 R-18

「瞬間に見せるあの顔が、焼きついて離れない」


 肌蹴た服の隙間から淡く色付いた肌が覗き、白い髪と汗の珠が散る。
 二つの影が絡み合う冷えた神殿の床は硬く、肉を纏う身体には少しばかり酷だった。
 衣服はほぼそのままで直接石造りの床と肌が擦れる事はなかったが、豊穣の館の柔らかな寝台とは比べようもないとデキウスは思う。
 今回の任務で言い渡された品は下界の護り人がいたお蔭で普段よりも手に入れやすく、暫しの休息をとるという体で地上に居座っているのだが、人祓いのされた神殿は乱れる吐息と布の擦れる音、そして肉を打つ音が響いている。
 腹の上で腰を回すデキウスは恍惚の表情を浮かべて乾いた唇を舐めると、ぐっと腰を屈めて己を犯す男の唇を奪った。
 先程よりも近くで聞こえる掠れた嬌声がルベウスの耳を楽しませ、穿つ楔で更に深く奥へと突き上げる。
 聖界ではこれほど深く交わる事はルベウスが許さず、斎戒宮に頼りながら緩やかな愛撫とじゃれあいで押さえているが、下界に降りるとその枷も無くなった。
 緩やかに降り積もる穢れはあったが互いを貪り熱を感じている間はそんな事もどうでも良くなる。
 斎戒宮で焼き清める事が出来る内は下界でのひと時を楽しみ、上では得られない充足感を得ていた。
 限界が近いのかルベウスの怜悧な目が蕩け、薄い唇が少しだけ開いて誘うように舌が覗いている。
 それに応えるように口付けを重ねることで傷付いた舌を絡めると、滲んだ血が益々興奮を誘い強く吸う。
 肉の輪を締め放出を促すと、ルベウスが喉の奥でくぐもった声を漏らしてデキウスの中へと溜まっていた熱を吐き出した。
 その感触にデキウスも服が汚れぬようにと肌蹴て晒したルベウスの腹へと精を飛ばす。
 互いの腹で伸ばされた精はじわりと肌へ染み込むような錯覚を起こさせた。
 荒い息の中、自分の鼓動を聞かせるようにルベウスの頭をかき抱くと耳元で何事か囁く。
 裂けた傷から垂れる赤を舐め取り、口角を上げてルベウスが笑った。


 あぁ、この顔が堪らなく満たすのだ。





 

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