「柔らかく」「首筋を撫でる」。キーワードは「涼しい」
雑多に置かれた品が周りに敷き詰められた中ルベウスは胡坐をかいた状態で本を読み耽り、デキウスは彼の背に凭れるようにしていつものように髪に触れている。
髪に指を通し、そのままの流れでうなじを柔らかいタッチで撫でさすると、ルベウスにも届くように音を立ててその部分に口付けた。
ルベウスの反応は、無い。
先日初めて口付けを交わし肌に触れることが出来たが、ひやりとした時間が過ぎただけで何度目かの溜息をつかされて終わった。
少しだけ距離が縮まったような気はするが、まだ暫くかかりそうだと自覚させられる。
うなじに唇をつけたままで小さく溜息をつくと紙面を辿っていた目がちらりとデキウスを見やった。
本を支えていた手が上がり、デキウスの銀糸を一瞬掠めて元の位置へと戻る。
「……」
再び静かな時間が過ぎていったが、その後溜息がこぼれる事はなかった。