黒と赤

聖09  お題【7/22】

交わした約束/来ないならこっちから/お前じゃなきゃダメなんだ

 


 


その気になるようにしむけてみろ。

軽やかにそう挑発したルベウスにどうしたものかと頭を悩ませる。
自分の中で何がそれほど執着させるのかデキウス自身にも分からないのだが、あまり深く考えると面倒なことになりそうな気配がして身体が求めているのだと思い込ませた。
それはそれで肉欲の罪とやらになるのではないかと思ったが、数えるのも馬鹿らしくなるほど試した旧神同士の交わりで堕ちる様子はない。
自分が言えた事ではないがルベウスの性に関する態度の冷淡さはこれまで声をかけた者達のプライドも淡い期待も粉々に打ち砕いてきただろうことは容易に想像ができた。
いっそルベウスと会うときにはアストラル体のままでいようか。そう思ったこともあったが、色の溢れる彼の塒は郷愁にも似たものを呼び起こし触れてみたくなるのだ。
その中で一際惹き付ける黒と赤はルベウスそのものだった。
深々とため息をつき、自分から動く気配のないルベウスへまた懲りずに手を伸ばす。
クッションを下に敷き、寝そべったままの体勢で伸ばした手があともう少しというところで空を切る。
まるで今の自分のようだと可笑しくなって忍び笑いのような自嘲を漏らすと、それに気付いたのかルベウスも同じようにクッションを下に敷き横になってきた。
目の前にあるにも関わらず遠い存在に借り物のような白い指を滑らせてみるが、目を閉じる訳でもなくじっとこちらを見てくる。
いつかこの顔が歪み、自分を求めてくるのを想像してみるが指に歯を立てられて都合の良い思考を打ちきられた。

 

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